オジギソウはなぜ葉を閉じる?「動かない株」と比べてわかったこと

小葉が対になって並ぶオジギソウの葉 植物

概要:触れると葉を閉じるオジギソウ。筋肉も神経もない植物が、どうやって一瞬で動くのか。そして、そもそも何のために動くのか。2022年に発表された研究は、光る指標と「動かない株」を使って、この二つの問いを切り分けていました。その調べ方をたどります。

葉を構成する小さな葉を「小葉(しょうよう)」、葉を支える柄を「葉柄(ようへい)」といいます。どちらがどう動くかを分けて見ると、仕組みを追いやすくなります。

触ると閉じる、その先にある二つの問い

小葉が閉じ、葉柄が下がる動きのイメージ。
小葉が閉じ、葉柄が下がる動きのイメージ。

オジギソウ(Mimosa pudica)に触れると葉が閉じる、というのは、植物の話の中でもよく知られたものだと思います。私も名前と現象だけは知っていました。けれど、いざ「なぜ閉じるのか」を人に説明しようとすると、自分が何も答えられないことに気づきます。

しかもよく考えると、この「なぜ」には性質のちがう二つの問いが混ざっています。

ひとつは、どうやって動くのか。植物には筋肉も神経もありません。それなのに、触れると、目で見て分かるほど速く葉がたたまれます。葉を動かす力はどこから生まれ、何がその合図になるのでしょう。

もうひとつは、何のために動くのか。しくみが分かっても、それが植物にとってどう役に立つのかは別の話です。速く動く能力そのものが、生きるうえで何かの利益になっているのかどうか。

「なぜ閉じる?」を二つに分ける
知りたいこと確かめ方
どうやって動く?細胞の変化と、葉の動く順番を追う
動くと何の役に立つ?動く葉と動かない葉を比べる

この二つは、調べる方法もまったく違います。前者は「動いている最中の体の中」を見る問題で、後者は「動く場合と動かない場合を比べる」問題です。2022年11月、基礎生物学研究所などの研究グループが発表した論文(Hagihara ほか, 2022, Nature Communications)は、まさにこの二つを別々に扱っていました。以下では、その研究が何をどう調べたのかを追いかけていきます。

葉を動かすのは、付け根にある「葉枕(ようちん)」

葉柄の付け根の葉枕と、水の移動で細胞の張りが変わる仕組み。
葉柄の付け根の葉枕と、水の移動で細胞の張りが変わる仕組み。

まず基本のしくみから。日本植物生理学会の「みんなのひろば」に、この点を説明した回答があります(神澤信行、2006年)。

オジギソウの葉の付け根には葉枕と呼ばれるふくらんだ部分があります。ここに、運動を担当する細胞が集まっている。葉が閉じるとき、実際に形を変えているのはこの葉枕であって、葉の面が自分で折れ曲がっているわけではありません。関節にあたるものが付け根にある、というイメージです。

葉枕の細胞は、水を出し入れすることで張りを変えます。植物の細胞は「細胞壁」という丈夫な壁で囲まれています。細胞の内側からその壁を押す圧力が、膨圧(ぼうあつ)です。水を多く含むと張りがあり、水が抜けると張りが弱くなる。この違いが、葉を動かす力につながります。

水の移動が葉の動きにつながる
1 →
細胞から水が出る
張りが弱くなる
2 →
葉枕の中で張りに差ができる
付け根が曲がる
3 →
小葉が閉じる
葉柄が下がる

葉枕で運動を担う細胞から水が出ると、膨圧が下がります。片側の張りが弱くなると、葉枕が曲がります。小さな葉である「小葉」の付け根では小葉が閉じ、葉を支える柄である「葉柄」の付け根では葉柄が下がります。ひとつの関節だけで全部が動くのではなく、それぞれの付け根にある葉枕が働いているのです。

ここまでが、いわば教科書的な部分です。私が面白いと思ったのは、この先でした。水が出ていくのが原因なら、「水を出せ」という合図はどこから来て、どれくらいの速さで届くのか。合図そのものは目に見えません。研究の工夫は、この見えないものをどう見るかに向けられていました。

見えない合図を「光」でとらえる

GCaMP6fで、カルシウム濃度の変化を蛍光の強さとして見る。
GCaMP6fで、カルシウム濃度の変化を蛍光の強さとして見る。

Hagihara ほか(2022)が使ったのは、カルシウムイオン(Ca²⁺)の濃度変化を蛍光としてとらえる指標でした。

細胞の中のカルシウム濃度が変わることは、植物でも動物でも、さまざまな反応の合図として働くことが知られています。ただ、細胞の中の濃度変化は、葉を外から眺めても分かりません。そこで研究では、GCaMP6fというタンパク質を細胞の中で作るようにしたオジギソウを用意しました。GCaMP6fは、周囲のカルシウム濃度が上がると蛍光が強くなるように設計されたタンパク質です。これを植物に持たせておけば、カルシウム濃度の変化を明るさの変化として撮影できます。

ここは誤解しやすいところなので、はっきり書いておきます。野生のオジギソウが自分から光るわけではありません。研究者が指標を組み込んだ植物を作って、はじめて見えるようになったものです。葉の動きを撮るだけでなく、その前に細胞の中で何が起きたかまで追えるようにしたのです。

葉枕のカルシウムの変化と、葉の動きが始まる順番。
葉枕のカルシウムの変化と、葉の動きが始まる順番。

そのうえで、刺激を与えたときの蛍光の変化と、葉の動きを同時に記録し、時間を突き合わせます。結果として、葉枕でカルシウム濃度の上昇が起き、そのあとで動きが始まる、という順番が見えました。論文には、傷害によって引き起こされたカルシウムの上昇が、運動に最大0.15秒先行したと記されています。

最大0.15秒は、葉枕でカルシウムが増え始めてから、動きが始まるまでの時間差です。「触ってから葉が全部閉じ終わるまでの時間」ではありません。合図が先に現れ、その後に葉が動く。その順番を、撮影した記録から確かめたわけです。速さを表す数字も、どこからどこまでを測ったのかが分かると、具体的に想像できます。

この観察に加え、カルシウムの変化を抑える処理で葉の動きも抑えられることが調べられました。単に時間が前後したというだけでなく、信号の変化に手を加えたとき、運動も変わるかを確かめたわけです。

「触られる」と「傷つけられる」は同じではない

接触と傷害で異なるカルシウム信号の形。
接触と傷害で異なるカルシウム信号の形。

もうひとつ、この研究で私が知らなかったのが、刺激の種類によって体の中の反応が違う、という点です。

軽く触れたときは、カルシウム信号が一度大きくなって戻る、山が一つの形でした。葉を傷つけたときには、山が二つある形になりました(論文Fig.2)。専門用語では、それぞれ「単峰性(たんぽうせい)」「二峰性(にほうせい)」と呼びます。見た目にはどちらも葉が閉じる反応でも、細胞の中を伝わる合図には違いがあったのです。

研究者は電気的な変化も測っています。触れたときの信号には、短時間で変化して元に戻る活動電位(かつどうでんい)が対応しました。傷つけたときには、それに加えて、よりゆっくり続く変異電位(へんいでんい)に対応する成分もありました。細胞には電気的な性質があり、その変化を合図に使えます。電気の信号があることだけで、動物の神経と同じ仕組みだと考える必要はありません。

小葉が並ぶ羽片と、その中の一つの小葉。
小葉が並ぶ羽片(うへん)と、その中の一つの小葉。

さらに論文の考察では、反応が及ぶ範囲についても区別がされています。触れられた場合の反応は触れられた羽片の内側にとどまる一方、傷害によるシグナルはより遠くまで伝わる、という整理です。羽片とは、小さな葉に見える「小葉」が左右に並んだ、羽のようなまとまりのことです。つまり「どこか一枚に触れたら株全体の葉が一斉に閉じる」と単純化するのは、少なくともこの研究の記述に照らすと正確ではありません。

軽く触れられたときと、実際に食べられたときで、体の中で起きることが違う。しくみの話が、そのまま次の「何のために」という問いにつながっていく感じがして、ここは読んでいて面白い部分でした。

「なぜ動くのか」を調べるには、動かない株がいる

動かない葉を用意する二つの方法
1 →
薬剤を使う
ランタンイオンで運動を抑える
2 →
遺伝子を変える
葉枕をつくらない株にする

さて、二つ目の問いです。速く動くことが、オジギソウにとって何の役に立っているのか。

この形の問いに答えるには、比較が要ります。動く株と動かない株を用意して、他の条件をできるだけそろえたうえで、何かが違うかを見る。言われてみれば当然なのですが、「動かないオジギソウ」を用意するというのが、まず簡単ではありません。

Hagihara ほか(2022)は、性質の違う二つの方法でこれを作っていました。

ひとつは薬剤で動きを抑える方法です。ランタンイオン(La³⁺)を用いた処理によって葉が動かないようにしたものと、比較相手として水で処理した葉を用意しています。実験でいう「対照」は、結果を比べる基準になる相手のことです。

葉枕のない株では、合図が伝わっても葉は動かない
調べたこと葉枕のない株
傷ついたときの電気信号伝わる
葉を動かす葉枕ない
刺激に応じた葉の運動起こらない

もうひとつは遺伝子を改変する方法です。狙った遺伝子を改変するCRISPR-Cas9という技術で、ELP1B1/ELP1B2という遺伝子の働きを失わせた株(変異体)は、そもそも葉枕を持たず、動きません。ここで重要なのは、この変異体でも傷害に対する電気シグナルは伝わると記されている点です。つまり「体の中で信号が走ること」は残したまま、「実際に葉が動くこと」を失わせた個体になっている、という株です。

なぜ二つの方法が必要だったのか。論文の考察には、薬剤処理には副作用の可能性があり、それを検討する追加の実験が記載されています。薬で処理した葉が、虫にとって食べやすくなったり食べにくくなったりしていないとは言い切れない。逆に遺伝子改変のほうは薬の影響を受けませんが、後で触れるように別の弱点があります。性質の違う二つの方法が同じ傾向の結果を示すなら、どちらか一方の弱点だけで結果を説明するのは難しくなる。この設計そのものが、私にはいちばん勉強になった部分でした。

バッタと3時間、葉のペアで比べる

切り出した葉のペアを同じ水入り瓶に挿し、瓶1個あたり3〜7匹のバッタで3時間比較する試験の模式図
食害試験の条件を示す模式図。葉のペアを同じ瓶に挿し、瓶1個あたり3〜7匹のバッタを使って3時間観察します。

では実際の比較はどう行われたのか。方法の記述を読むと、条件がかなり細かく決められていました。

まず使ったのは、株そのものではなく、葉柄の根元で切り出した、4枚の羽片をもつ葉です。比較する葉のペアを水入りの瓶に挿し、瓶を大きなプラスチック容器の中に置きます。虫はおよそ1日絶食させた成虫のバッタ(Atractomorpha lata)で、葉を挿した瓶1個あたり3〜7匹です。撮影時間は3時間です。実験の前後に葉を乾燥させずに量り、重量の減少率を求めています。さらに、虫が葉の上にとどまった時間も記録しています。

遺伝子改変の比較:葉はどれだけ軽くなった?

通常の葉(野生型側) 15.3%

葉枕のない株の葉 30.7%

0%40%
葉のペア12組、3時間の重量減少率。データ:Hagiharaほか(2022)Fig.3

結果として報告されている数値は次のとおりです。

  • 薬理処理による比較:動きを抑えた葉の重量減少率が38.0%、水処理の対照が18.9%(独立した葉のペア14組)。
  • 遺伝子改変による比較:野生型側が15.3%、葉枕を持たない変異体が30.7%(葉のペア12組)。

どちらでも、動かないほうがより多く食べられていたという結果でした。変異体との比較では、重量減少率の比がおよそ2倍です。

数字の読み方について、二点だけ補足します。ひとつは、この12という数は葉のペアの数であって、植物12株でもバッタ12匹でもないこと。もうひとつは、「約2倍」というのはこの条件での重量減少率の比であって、「食べられた葉の面積が2倍になった」と言い換えられるものではないことです。数字が独り歩きしやすいところなので、元の条件とセットで覚えておきたいところです。

薬剤の比較でも、動かない葉の減少が大きい

水で処理した葉 18.9%

ランタンイオンで動きを抑えた葉 38%

0%40%
葉のペア14組、3時間の重量減少率。データ:Hagiharaほか(2022)Fig.3

もうひとつの指標である葉の上の滞在時間も、動かない葉のほうが長くなりました。「どれだけ減ったか」に加えて「虫がどれだけとどまったか」を調べると、動く葉と動かない葉の違いを別の角度から見られます。

論文にはもうひとつ、印象に残る記述があります。Fig.4に関して、折りたたまれた葉に虫の脚が挟まれ、虫が移動した、という一例が示されているのです。ただしこれは観察された例のひとつであって、すべての虫に同じことが起こると読むべきものではありません。

支持されたこと、まだ言えないこと

この実験で分かったことと、残る問い
実験から分かったことさらに調べたいこと
動かない葉は、より多く食べられた野外でも株を守る効果があるか
動かない葉に虫が長くとどまった別の種類の虫でも同じか

ここまでの結果は、「速く動くことが虫の食害を減らす方向に働く」という見方を支持しています。性質の異なる二つの操作が同じ傾向を示したこともあって、なかなか説得力があります。

ただし、食害防御を支持する結果が得られたことと、動く理由がそれだけだと決まることは別です。結果と実験の条件を見比べると、受け取り方にもいくつか注意したい点があります。

第一に、遺伝子改変の変異体は、葉が動かないだけでなく、葉枕という構造そのものを持ちません。動きだけをきれいに取り除いた同一の植物、というわけではないのです。構造が違えば、硬さや形など、他の性質も違っている可能性があります。薬理処理のほうも副作用の可能性を完全には排除できません。だからこそ二つの方法が必要だったわけですが、二つを足しても「動き以外はまったく同じ」にはなりません。

確かめた範囲を一歩ずつ広げる
1 →
今回
室内・切り出した葉で比較
2 →
次の問い
野外で育つ株でも比較
3 →
さらに
生き残りや子孫の数に影響するか

第二に、これは室内で、切り出した葉を使った実験です。野外で株がどれだけ生き残り、子孫を残すかまで調べたものではありません。著者らも、野外でのモデル検証が必要だと述べています。

第三に、使われた虫の種類も限られています。カルシウムの撮影に使われたバッタ(Acrida cinerea)と、食害比較に使われたバッタ(Atractomorpha lata)は別種です。いずれにせよ、あらゆる草食の動物に対してこの仕組みが同じように働く、と一般化できる材料ではありません。

そして念のため書いておくと、この研究が示しているのは、カルシウム濃度の変化・電気的な信号・葉枕の運動が結びついている、ということです。植物が驚いたとか、痛みを感じたとか、身を守ろうと判断した、という話ではありません。信号や運動が観察されたことと、内面の状態を推し量ることは、別のことだと思っています。

身近な植物の見え方が少し変わった

淡い紫色のオジギソウの花。
淡い紫色のオジギソウの花。

オジギソウは日本でも栽培され、展示されることがあります。国立科学博物館・筑波実験植物園の紹介記事(2013年12月5日)には、温室で展示用に育てていたことが書かれていて、丸い淡紫色の花や、茎のとげについても触れられています。触ると閉じるという一点だけが有名ですが、実際には花もとげもある、ひとつの植物なのだ、という当たり前のことに改めて気づかされます。

今回この研究を読んで、自分の中で変わったのは、現象そのものより「どう確かめるか」の見え方でした。見えない合図は、指標を組み込んで見えるようにする。役に立っているかどうかは、動かない状態を作って比べる。比べる条件をそろえるために、切り出した葉をペアにして、虫を絶食させ、時間を決めて撮影する。そのうえで、言えることと言えないことを分けて書く。

葉が閉じるという身近な現象の中に、合図を送るしくみと、水の移動で形を変えるしくみ、そして虫との関わりが重なっていました。最初は「触ったら動く」という一つの出来事だったものが、調べるほどに、いくつもの問いに分かれていく。その先を知りたくなるのが、博物学の面白さなのだと思います。

参考文献

1. Hagihara T., Mano H., Miura T., Hasebe M., Toyota M. (2022) "Calcium-mediated rapid movements defend against herbivorous insects in Mimosa pudica", Nature Communications 13, 6412. https://doi.org/10.1038/s41467-022-34106-x
 原著を日本語で要約・再構成。© The Author(s) 2022、CC BY 4.0
2. 基礎生物学研究所 プレスリリース(2022年11月14日) https://www.nibb.ac.jp/press/2022/11/14.html
3. 日本植物生理学会「みんなのひろば」植物Q&A「おじぎ草の仕組み」神澤信行(2006年6月30日) https://jspp.org/hiroba/q_and_a/detail.html?id=821
4. 国立科学博物館 筑波実験植物園「うごく植物『オジギソウ』育成中!」(2013年12月5日) https://tbg.kahaku.go.jp/event/2013/12touch/1205.php

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