松ぼっくりは、なぜ水につけると閉じる? 雨の日に閉じる理由と仕組み

鱗片の断面、拡大した組織、採取した五つの微小試料を示す研究図 植物
松ぼっくりの一片を切った断面と、内部の組織。出典:Ulrich et al. (2025), Figure 1/CC BY 4.0。原図変更なし。

開いていた松ぼっくりが、湿ると閉じる。植物の動きというと生きた葉を思い浮かべますが、松ぼっくりでは、重なり合う硬い部分の構造が動きを生み出します。

鍵は、水分を含んだときの伸び方が、内部の組織によって違うことです。同じようには伸び縮みしない部分がつながっているため、全体が曲がります。ただ、二枚の板を貼り合わせたような説明だけでは、実物の曲がり方を十分に表せないことも分かってきました。

2025年の研究では、松ぼっくりの組織が水分を含む様子と曲がる様子を測り、計算上の模型と比べています。何を測ると、この身近な動きの仕組みが見えてくるのでしょうか。

硬い一枚の中にも、違う組織がある

松ぼっくりで重なり合っている部分を、鱗片(りんぺん)といいます。外からは一枚の硬い板のように見えても、中は一様ではありません。研究では、細胞壁の厚い細胞からなる部分、繊維状の部分、その間の褐色の組織を区別しています。[1]

二層の模型で考えてみましょう。二枚を貼り合わせ、一方がもう一方より長く伸びようとすると、つながったまま真っすぐではいられず、曲がります。これは仕組みを理解するための模型です。実際の鱗片に、境目のはっきりした二枚の板が入っているという意味ではありません。

今回の研究が確かめたのは、この違いがどのくらい重要かということです。組織の性質だけでなく、どの部分がどこに配置されているかも、曲がり方を左右します。

鱗片の断面、拡大した組織、採取した五つの微小試料を示す研究図
鱗片の内部と試料の採取位置。Aは切断位置、Bは断面、Cは試料を取った位置、Dは取り出した微小な試料です。C・Dの番号1・2は繊維状の部分、3は褐色の組織、4・5は細胞壁の厚い細胞からなる部分です。画像を押すと拡大できます。
出典:Ulrich et al. (2025), 原論文。CC BY 4.0。原図は変更していません。(Figure 1)

水分の増減と、曲がる角度を別々に測る

使われたのは、ドイツの植物園にある同じ一本のPinus jeffreyiから得た四つの松ぼっくりです。すでに開き、種子の多くを放出して地面に落ちていたものを集めました。四本の木を比べた研究ではありません。[1]

研究者は、一部の鱗片から組織を分け、周囲の湿度を変えながら重さを測りました。水分が出入りすると試料の重さが変わるので、組織ごとの水分の取り込み方を比べられます。

また、湿った状態と乾いた状態の微小な試料を三次元の画像にし、どの方向へどれだけ形が変わったかを調べています。水を含むと、どの方向にも同じ割合で膨らむとは限らないからです。

鱗片全体の動きは、湿度を調整できる装置の中で別に測りました。固定した鱗片を横から撮影し、位置の印を追って曲がる角度を求めます。内部の試料から分かる伸縮と、一枚全体としての動きを結び付けるための測定です。

湿度調整装置とカメラ、二列に固定された十枚の鱗片、角度測定の追跡点
鱗片の曲がり方を測る実験装置。Aは撮影装置、Bは五枚ずつ二列に固定した鱗片、Cは一列を写した画像です。Cの点の位置を追い、湿度の変化に伴う角度を求めています。
出典:Ulrich et al. (2025), 原論文。CC BY 4.0。原図は変更していません。(Figure 2)

同じ湿度でも、来た道が違うと角度が違う

興味深いのは、ある湿度での角度が一つに決まらなかったことです。乾いた状態から湿らせた場合と、湿った状態から乾かした場合とで、同じ湿度でも鱗片の角度に違いがありました。[1]

このように、現在の条件だけでなく、そこに至るまでの変化によって状態が違うことを、ヒステリシスと呼びます。松ぼっくりが経験を学習した、という意味ではありません。水分の出入りと材料の変形を調べた結果です。

松ぼっくりの開き具合を比べるなら、今の湿度だけでなく、その前に濡れていたのか、乾いていたのかにも目を向ける必要があるわけです。形だけを見て、湿度を正確に一つの数値へ読み替えることはできません。

二枚の板の模型から、繊維の配置まで

次に研究者は、測定から得た伸縮の性質を計算上の模型へ取り入れました。単純な二層の形と、褐色の組織の中に繊維が配置された形などを比べ、どのように曲がるかを計算します。

繊維を一様な一枚の層として扱うだけでなく、周囲の組織の中に埋まった形として表すことで、実験で観察された曲がり方に近づきました。水を含んで伸縮する性質と、その性質を持つ部分の配置を、両方考える必要があるという結果です。[1]

ただし、計算が実物を丸ごと再現したわけではありません。幅方向の反りは、実物とは逆向きになるなど、残る違いもありました。組織の硬さをどう設定するか、境目をどこまで単純化するかによっても結果が変わります。著者たちは、材料の性質をさらに測り直すことや、実物の立体画像に近い形を計算へ取り込むことを今後の課題に挙げています。

二層、三層、繊維を含む形、鱗片に似た形の七つの計算モデルの変形
構造と硬さの設定を変えた計算モデル。A・Bは二層、Cは三層、D・Eは繊維を組み込んだ形、F・Gは鱗片に近い形です。BとGでは一部の組織の硬さも変えています。色は元の位置からどれだけ動いたかを表し、温度や実物の色ではありません。各図の色の目盛りは同一ではありません。
出典:Ulrich et al. (2025), 原論文。CC BY 4.0。原図は変更していません。(Figure 5)

すべての松ぼっくりに、そのまま当てはめない

今回の対象は一種の、すでに開いた松ぼっくりです。枝についているものが初めて開く過程や、別のマツの種まで、同じ条件で調べたわけではありません。研究で使った鱗片と、手元の松ぼっくりの動く速さが同じになるとも限りません。

それでも、硬い部分の中に伸縮の違う組織が組み合わされていること、その配置によって動きが変わることは、松ぼっくりを見る新しい手がかりになります。外から見える開閉の裏側には、水分と材料の性質が結び付いた仕組みがあるのです。

水分で変わるのは、松ぼっくりの形だけではありません。乾いたコケが水を得て回復するまでの時間は、コケの乾燥と回復を調べた記事で紹介しています。

もっと知りたい人へ・参考文献

組織の水分と曲がり方を測った研究を読む
Ulrich, K. et al. (2025). Beilstein Journal of Nanotechnology 16, 1695–1710.
Beyond the bilayer: multilayered hygroscopic actuation in pine cone scales

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